東京カンテイの調査によると、実際にマンションの建替えが実施されたタイミングは、平均して築33.4年となっています。(※1)建替え検討から建替えが完了するまでおよそ10年と言われていますので、築23年でマンションの建替えが検討されていると考えることもできます。なぜ、このような早い時期に建替えを検討することになったのでしょうか?
建替え相談の多くは配管や給水設備、耐震問題がきっかけとなっています。建物の構造自体は 十分に耐えうる状態であっても、昔の鉄筋コンクリート造のマンションの多くは配管がコンクリートに埋め込まれているため交換が難しく、劣化に対してきちんと対応ができませんでした。しかし、現在のものは交換が容易な設計となり管材の耐用年数も延びています。
国土交通省によると鉄筋コンクリート造の躯体の耐用年数は120年、適切なメンテナンスを施すと150年延びるとされています。(※2)また、海外に目を向けると、築100年以上の石造りの建物が修繕を繰り返しながら現役で活躍しています。最後の同潤会アパートである上野下アパートは築84年で建替えとなりましたが、昭和4年に建てられた物件です。建築技術は向上していきますから、今後は100年マンションも現実のものとなるでしょう。
建替えは費用負担や合意形成の面で難しくこれまでに実現できたマンションは300棟ほどと言われています。つまり、今暮らしているマンションにはまだまだ現役で頑張ってもらわなければならないのです。現在、中古マンションの取引市場で売りに出されている物件の平均築年数は築25年となっています。年々長くなる傾向にあり、20年後には築40年の中古取引が当たり前になるかもしれません。もう売れなくなるだろうと見て見ぬ振りをせずに、建物に愛着を持ってきちんと管理し、適切なメンテナンスを施して次世代に繋いでいかなければなりません。そのきっかけが大規模修繕です。
※1 参照:東京カンテイ「マンション建替え寿命」 ※2 参照:国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 取りまとめ後の取組紹介
近年、住み替えるよりも暮らし慣れた家を、体調変化などに合わせてリフォームする傾向が強くなっているそうです。具体的なリフォームの内容は、タイル張りのお風呂からユニットバスに、防寒対策で二重窓へ、床の段差解消や手すりの設置など、年齢に応じた暮らしを向上させるものとなっています。
共用部分も同じです。新築当初は若い子育て世代が中心に暮らしていたマンションも、経年と共にそこで暮らす人たちと同じように年を取っていきます。高齢化でマイカーを手放す人が増えると、駐車場の空き区画が増えて管理組合の収入は減ります。これまで通りでは駐車場の維持管理ができなくなるのです。維持管理費の高い機械式駐車場であれば尚更です。そこで、機械式駐車場から平置き駐車場に改修する管理組合があります。
また、築25年から30年で取替えが必要な給排水設備ですが、専有部分の工事を組合員に任せているため、多くの管理組合は共用部分の工事を終えても漏水の不安を抱えています。そのようなことから、マンション全体の資産性を考えて専有部分の給排水設備改修も大規模修繕時に行う管理組合もあります。
その他、維持管理費の負担を減らすため、植栽豊かな屋上庭園を撤去したり、天然石張りのエントランスを安価な擬石で補修したりするところもあります。それとは反対に、エントランス扉の自動化、最新式のインターホン・集合ポストへの交換、防犯カメラの設置など機能面や生活の利便性を向上させるところもあります。
大規模修繕はマンションの資産価値を向上させる良い機会ですが、住民や組合員の生活スタイルや状況をきちんと把握して工事内容を取捨選択していくことが求められるのです。
そこで今回のセミナーでは、他マンションが行った工事内容の取捨選択を大規模修繕の回数ごとに紹介し、マンションの一生から考えた大規模修繕の適切な内容とタイミングをお伝えします。
マンションで生活していく上で必ず経験する大規模修繕工事を、管理組合主導で失敗なくスムーズに行うための情報をマンションに暮らす全ての人へ向けて発信しています。運営は設計会社・施工会社による賛助会員、建築・住設・保険などの企業からなる特別賛助会員の会費によって行われております。マンション生活や管理組合運営に関する有益な情報、専有部分のリフォームに関する相談など、専門家集団ならではの豊富な知識・経験、蓄積されたデータ、事例などを基に居住者視線でサポートしています。