

年の始めにあるメーカーから値上げ実施の連絡がありました。原油価格の上昇はもちろん、インフラ整備や自然災害、環境規制によって世界的に原料の需要が増加しているようです。海外は国内価格の2倍以上になっていて、価格維持の自助努力を続けてきているが、対応可能な限界を超えてしまっているとのことでした。実際に原料は去年だけで2度も値上がっています。
2020年開催の東京オリンピック特需が落ち着けば、大規模修繕の工事費は下落するという考え方から、工事を延期した管理組合も多くありました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によってオリンピックが1年延期になり、またコロナ禍もあって、予定通り工事を進めることができていないマンションが累積しています。一時的なものであれば問題ありませんが、大規模修繕は一度行えば終わりというものではなく、12~15年程度のサイクルで行われ るため工事需要は増え続けています。慢性的な人手不足は深刻なままで、グラフの通り供給戸数が多かった年代のマンションが1回目の大規模修繕を迎えているのが今なのです。
需要と供給のバランスが崩れ、さらなる工事費の上昇が考えられる今、どのようにして大規模修繕を進めていけば良いのでしょうか?
政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、脱炭素社会の実現に舵を切りました。カーボンニュートラルの取り組みは2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みでもあります。経団連が企業行動憲章にSDGsを盛り込んだこともあり、最近では企業活動として浸透してきました。建物に関するCO2排出量は日本全体の排出量の3分の1を占めると言われています。建物を「つくっては壊す」ことによる資源の消費と産業廃棄物の発生を抑制し、資源の循環利用を通じて、環境への負荷を低減させ、ストック型社会への転換を図る取組みが積極的に進められています。「建物を直して長く大切に使う」大規模修繕そのものがSDGsの取組みと言えます。
建物は省エネの改善余地が大きく、例えば、省エネ効果の高いサッシや窓ガラスに変えるだけで冷暖房費が抑えられCO2削減に繋がります。工事自体もSDGsの観点から環境配慮型商品が増えており、コンクリートの破片や塊など産業廃棄物が出ない工法が次々と出てきました。
欧米は住宅供給量のうち中古住宅が占める割合は7割以上となっていますが、日本は3割といまだ低い状態です。そのため家計における住宅費の割合が高く、収入が多くても自由に使えるお金が少ないのが実情です。そのようなことから、政府は既存住宅流通市場の活性化を推進し、2022年4月には地方自治体が主体となってマンション管理適正化法による評価制度「管理計画認定制度」の運用を順次開始します。この制度の役割は高経年マンションの維持管理対応が1つですが、適切に管理されているマンションを認定し、市場で評価していくための仕組みでもあるため、認定マンションには大規模修繕における融資金利引き下げ等のインセンティブも検討されています。きちんとメンテナンスされたマンションが価値を持つようになれば生活にゆとりができ、今よりも豊かな生活を送ることができます。
SDGsが国連サミットで採択されてから7年が経過し、2020年から「行動の10年」がスタートしています。SDGsが社会に浸透し始め、政府はもちろん企業も目標達成のために取り組みのスピードを速め、規模を拡大しています。このような流れの中で、大規模修繕を通じてどう社会に貢献できるかが問われるようになってきています。私たち一般社団法人マンション大規模修繕協議会はSDGsに賛同し、大規模修繕という安心・安全な建物を次世代に繋ぐサポートをしながら、持続可能な暮らしや社会の実現を目指します。
SDGsとは…
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、国連本部で日本を含む193の加盟国の合意の下、採択された「世界を変革するための17の目標」です。2030年までに17の目標をクリアすることで、持続可能で平和な世界が実現可能になるよう国連サミットで採択されたものです。
一般社団法人マンション大規模修繕協議会 代表理事/株式会社アーバン・プランニング相談役/一級建築士/福祉住環境コーディネーター2級。これまで全国で多くのマンション大規模修繕コンサルティングを手掛けて成功へと導く。この他、社団法人北海道マンション管理組合連合会、バリアフリーデザイン協会副会長など、多方面で活躍中。大規模修繕協議会セミナーはこれまで全国で150回開催され、その講師も務めている。
一般社団法人マンション大規模修繕協議会 副代表理事/株式会社アーバン・プランニング 代表取締役社長。建築の技術者として長年、建物に携わる仕事をし、30年マンションに住み続けている。理事、修繕委員、漏水対策委員など歴任し、外からも内側からも組合員のリアルな目線で諸問題解決に取り組んでいる。
一般社団法人マンション大規模修繕会 副代表理事/株)色設計 代表取締役/一級建築士/千葉県内を中心に多くのマンション大規模修繕コンサルティングを手がけ成功へと導く。近年では、マンションの日常に起こる様々な問題を解決するため、年間200回超マンションを訪れ、理事会等に出席している。
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会 理事 埼玉支部支部長/株)C’s建築工房 代表取締役/一級建築士/一級建築施工管理技士/福祉住環境コーディネーター2級/応急危険度判定士/被災宅地危険度判定士/鉄筋コンクリート系マンション健康診断技術者
「長期修繕計画作成ガイドライン(2008年)」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(2011年)」の2つのガイドラ
インが2021年9月に改訂されました。約10年ぶりの改訂になります。ガイドライン策定時は主に新築マンションの購入者向けに内容がまとめられていましたが、今回の改訂では既存マンションの長期修繕計画の見直しにも用いられることを想定し、すでに積み立てられた修繕積立金の残高をもとに修繕積立金の目安額を算出する計算式に変更されています。また、適切な長期修繕計画に基づく修繕積立金の事例を踏まえ、修繕積立金の㎡単価が更新されました。
本マニュアルは長期修繕計画の概要と見方を解説し、お持ちの長期修繕計画が健全であるかを確認しながら、どうすれば有効性の高い計画になるのかをまとめたものです。この度のガイドライン改訂内容を反映させておりますので、ぜひお役立て下さい。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、セミナー会場においては、参加者およびスタッフの安全と健康を配慮し、以下の対策を行います。
会場のドアノブ・テーブルなど設備・備品・機材は定期的に消毒します。手指消毒用アルコールを会場に用意します。会場扉の開放など定期的に換気をします。
全てのスタッフは感染防止の為、マスク着用を徹底します。
全てのスタッフは出勤前に検温、定期的に手洗い・消毒します。
定員数を抑えて、人と人の間隔を広くします。
例)2名用テーブルに1名の使用、座席の間隔をあける等。
※ご参加の皆様およびスタッフが発症した際は、当該保健所と適切に連携して対応するとともに、必要に応じホームページ等でお知らせします。
マンションで生活していく上で必ず経験する大規模修繕工事を、管理組合主導で失敗なくスムーズに行うための情報をマンションに暮らす全ての人へ向けて発信しています。運営は設計会社・施工会社による賛助会員、建築・住設・保険などの企業からなる特別賛助会員の会費によって行われております。マンション生活や管理組合運営に関する有益な情報、専有部分のリフォームに関する相談など、専門家集団ならではの豊富な知識・経験、蓄積されたデータ、事例などを基に居住者視線でサポートしています。