かつて私のもとに、ある管理組合の理事長さんがご相談にみえました。
「大規模修繕からわずか4年で、多くの窓水切り周辺で外壁塗装がはがれ出している。すべては業者を決定した理事長の責任だと、組合員から責めたてられている」とおっしゃるのです。
実際にマンションを拝見した私は衝撃を受けました。窓水切りの仕様が建物外壁より10mm内側に凹んでいる状況で(本来は建物外壁より20mm以上外側へ出ている状況がベスト)、雨水の侵入を防ぐシーリングも厚さ深さ共に3mm程度しか施されておらず、役目を果たすものではありませんでした(こちらも本来は20mm以上必要)。聞けば、施工会社は「水切りの取替えをしなくても高品質の外壁塗料で仕上げるので、塗料が剥がれる心配はない」と言ってきたそうです。
 しかし、理事長さんの不安は的中し、わずか数年で塗料は剥がれ落ちていきました。しかも、施工会社はその時すでに倒産していて、保証修理の相談もできません。理事長さんは、組合員全員からの原因究明や責任追及をされ、発覚当初、引越しも覚悟していたとのことです。窮地の中、組合員全員と計り知れないほどの時間を掛け丁寧に話し合いを重ね、理解を経て、修繕費用借り入れのために何度も金融機関に足を運び、次の大規模修繕を若干前倒して何とか改修に漕ぎつけました。
 なぜ、このような不幸が起こるのでしょうか?責任は新築工事をした施工会社、大規模修繕工事をした施工会社にあります。正しい知識、常識の欠如が、結果として間違った工事を行い、組合員全員の大切な財産を捨ててしまったのです。
 あの日の苦渋に満ちた理事長さんの顔を忘れられません。
そして、このような不幸を繰り返さないためには、大規模修繕を根本から見直し、不良工事や手抜き工事を根絶する、新しい基準とルールが必要だと考えました。それが「修繕周期15年システム」という新しい仕組みです。
 このシステムは、大規模修繕を取り巻くトラブルを阻止し、管理組合様が抱えるさまざまな問題を解決します。そして、このプロジェクトが社会に広く深く浸透すれば、建設業界全体の意識と常識も変わり、マンションライフの将来をより安心に満ちたものにしていくことができます。
 そのために今必要なのは、自分たちのためにどんな修繕工事を行うのか、大規模修繕のあり方を選択する管理組合の決意です。その熱い思いを認定技術者たちのベクトルと一致できれば、大規模修繕は必ず成功します。
 修繕周期15年」を実現する最大のカギ。それは大規模修繕に関わる者すべての“マインド”にほかならないのです。

 組合員の皆様の暮らしを、今よりもっと良いものに。その思いを胸に、管理組合のアドバイザーとして組合運営を支えてまいります。

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